今月の病気① 光線温熱化学療法(PHCT)
今月より1カ月に2回「今月の病気」と称して当院獣医師が自分の得意とする分野で病気について解説します。
今月より1カ月に2回「今月の病気」と称して当院獣医師が自分の得意とする分野で病気について解説します。
☆7月のセミナーの日程&テーマ☆
昨年話題になった僧帽弁閉鎖不全に対する治療についてのEPIC STUDY(エピック試験)の後発表されたVALVE STUDY(バルブ試験)についての講演がありました。
EPIC STUDYは僧帽弁閉鎖不全症のうちの左心房拡大及び左心室拡大もおこしている犬(ACVIM重症度分類B2の中の左心房及び左心室の拡大を呈しているもの)の治療にピモベンダンを投与すると投与しない犬よりもうっ血性心不全(肺水腫)の発症を遅らせることができるというものでした。
VALVE STUDYは僧帽弁閉鎖不全ですでに肺水腫を発症した犬を対象に行われた研究です。重症度分類ではACVIMのCに該当します。
肺水腫の治療には利尿剤が必要です。利尿剤のフロセミド、強心血管拡張薬ピモベンダン、および血管拡張薬であるACE阻害剤の3剤を使った治療が主流でした。
VALVE STUDYはこの3剤を使った治療(トリプルセラピー)に対して、ACE阻害剤を除いた2剤での治療(ダブルセラピー)の治療効果を比較したものです。
トリプルセラピーの方がより治療効果が高いだろうというおおかたの予想に反し、結果はACE阻害剤を使っても使わなくてもほとんど差がない、むしろ使わない方が少し良いのではないか、という傾向がみられました。
これを読まれると、今トリプルセラピーを受けている方が誤解をされてはいけないので補足します。
ACE阻害剤という薬は副作用もあまり起こさず、過去の研究では僧帽弁が変性していびつになるのをある程度防いでくれるというデータもあります。
肺水腫の治療中に腎不全を起こした際の腎血流を改善させる効果も期待できるので、循環器の専門医からも今使っていてコントロールされている肺水腫なら継続してもよいのではとの意見も出ています。
同じ僧帽弁閉鎖不全でもその症状の重さや合併している疾患、現在の体の状態により使用する薬は適宜調節する必要があります。
病院とおうちの方とでしっかりと情報交換をしてより良い状態で維持できるよう、治療していきたいと考えております。
阿部素子
8月14日(火)・15日(水)・16日(木)は休診となります。
急患の場合は留守番電話に診察券NO・お名前・用件を録音して下さい。
診察可能な場合は10分以内にご連絡致します。
17日(金)より通常通り診察致します。
勉強会のため、6月23日(土)の診察受付は午後6時までとなります。