今月の病気① 光線温熱化学療法(PHCT)

今月より1カ月に2回「今月の病気」と称して当院獣医師が自分の得意とする分野で病気について解説します。

光線温熱化学療法(PHCT)                    院長(総合科)吉田俊一  獣医腫瘍科認定医Ⅱ種
 光線温熱化学療法はガンに対する新しい治療法(先端医療)です。
 食生活や飼育環境の変化、また予防医学の進歩によりペットの寿命は飛躍的に延び、それに伴い病気も多様化しています。その中でもとりわけガンは人と同様にペットの死因のトップになり、その治療法は重要なテーマとなっています。
 ガンの治療は外科手術療法、化学療法(抗がん剤治療)、放射線療法が人と同じく3大治療と言われますが、それ以外にも免疫療法、温熱療法、遺伝子療法などがあります。
 今回紹介します光線温熱化学療法は温熱療法に化学療法を加えたものです。具体的にはインドシアニングリーン(ICG)修飾リポソーム(ICG-Lipo)を血管内に投与し腫瘍組織内に蓄積させた後、外部より光照射(レーザー)する方法です。
 *インドシアニングリーン(ICG)とは
  インドシアニングリーンは医学領域では胆管道系検査薬として使用されてきた薬剤で安全性は十分に認識されています。本剤は800nmの光を吸収して発熱する性質(温熱効果)と600~800nmの光に反応して活性酸素を誘導する性質(光線力学的効果)が分かっています。
 *インドシアニングリーン修飾リポソーム(ICG-Lipo)とは
  細胞膜と同じ材料で作られた小さな気泡(小胞)をリポソームと言い、このリポソーム内に抗がん剤など種々の物質を内包させ、これをICGに結合させたものです。
ラブラドールレトリバーMIX 2002.8.1生 避妊雌 21Kg
 左眼下と頬粘膜の腫瘍。CT検査により鼻の中(鼻腔)及び目のくぼみの底(眼窩)に腫瘍の広がり(浸潤)を確認。
 治療は外科手術の対象とならない顔の広範囲の腫瘍でかつ頻回全身麻酔を必要とする放射線治療は高齢により回避した結果、光線温熱化学療法に加え免疫療法(丸山ワクチン)とオゾン療法を行った。
1.顔の腫瘍の様子
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2.CT検査結果
HANABI.jpg  HANABI0001.jpg
3.治療の様子
 1)点滴(ICG-Lipo)は60分を一週間毎に3回実施
IMG_3738.JPG
 2)レーザー照射(冷やしたジェルを入れた袋越しに毎日~週3回照射)
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 3)オゾン療法(肛門より注入)
IMG_3707.JPGのサムネール画像
 *オゾン療法とは
 人の医学分野ではヨーロッパ特にドイツを中心に治療が行われています。オゾンの殺菌作用だけでなく免疫調整作用、消炎鎮痛作用、抗がん作用による治療効果をあげています。
 動物では肛門からオゾンガスを注入することが多く、全く痛みや不快感がないのが特徴です。

7月の飼い主セミナーのお知らせ

☆7月のセミナーの日程&テーマ☆

・7月21日(土)  犬や猫を取り巻く環境 私たちの環境

☆今後のセミナーの日程&テーマ☆
・8月18日(土)  犬の予防を考えた犬との生活‐問題点の改善について‐
・9月15日(土)  あなたは犬派?猫派?
・10月20日(土) 犬を飼う前に考えよう‐さまざまな犬種について‐
〇時間 午後7時~9時まで
〇場所 吉田動物病院 アニマルケアセンター1階
〇講師 小西 伴彦先生 当院インストラクター
    ドッグサポート「plus Wan犬のしつけ方教室」 主宰
    一般社団法人ふくい動物愛護管理支援センター協会(FAPSC)代表理事
〇受講料 1回1人1000円 小学生以下無料
☆参加希望の方は受付又はお電話でご予約下さい
※参加受付の締め切りは前日です。
※ワンちゃん・ネコちゃんはお留守番でお願いします。
ネコちゃんの話を含むセミナーは7月21日・9月15日になります

第108回日本獣医循環器学会に参加してきました

昨年話題になった僧帽弁閉鎖不全に対する治療についてのEPIC STUDY(エピック試験)の後発表されたVALVE STUDY(バルブ試験)についての講演がありました。

第108回.JPG  第108回3.JPG

EPIC STUDYは僧帽弁閉鎖不全症のうちの左心房拡大及び左心室拡大もおこしている犬(ACVIM重症度分類B2の中の左心房及び左心室の拡大を呈しているもの)の治療にピモベンダンを投与すると投与しない犬よりもうっ血性心不全(肺水腫)の発症を遅らせることができるというものでした。

VALVE STUDYは僧帽弁閉鎖不全ですでに肺水腫を発症した犬を対象に行われた研究です。重症度分類ではACVIMのCに該当します。

肺水腫の治療には利尿剤が必要です。利尿剤のフロセミド、強心血管拡張薬ピモベンダン、および血管拡張薬であるACE阻害剤の3剤を使った治療が主流でした。

VALVE STUDYはこの3剤を使った治療(トリプルセラピー)に対して、ACE阻害剤を除いた2剤での治療(ダブルセラピー)の治療効果を比較したものです。

トリプルセラピーの方がより治療効果が高いだろうというおおかたの予想に反し、結果はACE阻害剤を使っても使わなくてもほとんど差がない、むしろ使わない方が少し良いのではないか、という傾向がみられました。

これを読まれると、今トリプルセラピーを受けている方が誤解をされてはいけないので補足します。

ACE阻害剤という薬は副作用もあまり起こさず、過去の研究では僧帽弁が変性していびつになるのをある程度防いでくれるというデータもあります。

肺水腫の治療中に腎不全を起こした際の腎血流を改善させる効果も期待できるので、循環器の専門医からも今使っていてコントロールされている肺水腫なら継続してもよいのではとの意見も出ています。

同じ僧帽弁閉鎖不全でもその症状の重さや合併している疾患、現在の体の状態により使用する薬は適宜調節する必要があります。

病院とおうちの方とでしっかりと情報交換をしてより良い状態で維持できるよう、治療していきたいと考えております。

阿部素子

お盆休みのお知らせ

8月14日(火)・15日(水)・16日(木)は休診となります。

急患の場合は留守番電話に診察券NO・お名前・用件を録音して下さい。

診察可能な場合は10分以内にご連絡致します。

17日(金)より通常通り診察致します。

もうすぐ梅雨入り!

梅雨といえば『カビ』の季節でもあります。

春以降室内で生活するペット達にとってアレルギー(環境要因によるアトピー)
による皮膚炎は問題になります。
アトピーの代表はハウスダストですが、季節限定のカビ(室内ではエアコン)
には注意しましょう。
梅雨1
梅雨3
梅雨4
梅雨3

診察時間変更のお知らせ

勉強会のため、6月23日(土)の診察受付は午後6時までとなります。

ご迷惑お掛け致しますが、ご了承くださいますようお願い致します。
院長

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