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今月の病気② うさぎの消化管運動機能低下症

うさぎの消化管運動機能低下症
エキゾチックアニマル科 山本茜
今回はうさぎの消化管うっ滞(RGIS)についてお話しします。
うさぎは長い消化管を持ち、体重の10~20%が消化管で占められています。
そして、各種のストレスや痛み、脱水や不適切な食事により容易に消化管の蠕動運動を低下させてしまいます。
このような様々な原因による消化管のうっ滞を
うさぎ消化器症候群(RGIS:Rabbit Gastrointestinal Syndrome)と呼びます。
慢性的な消化管うっ滞が起こると、便秘や食欲不振につながります。
重症例では全身性のショック状態を伴い、緊急処置が必要になる場合もあります。
食欲不振や便秘といった主訴で来院されたうさぎさんは、お腹を触って消化管の状態を確認します。
たとえば胃の中に内容物が貯留して膨張している場合はこのとき触知することができます。
続いて、口腔内検査を行って歯の不正咬合の状態を確認したのち、お腹のレントゲンに進みます。
慢性的な消化管うっ滞とひとことで言っても、胃、小腸、盲腸とうっ滞の箇所は様々です。
レントゲンによりチェックするのは胃の膨満の具合と胃内容の状態、および消化管内のガスの貯留のしかたです。
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この症例は前日からの食欲不振を主訴に来院されました。
胃内容物の軽度貯留と、胃内および盲腸内のガス貯留を認めます。
検査により物理的閉塞のない消化管うっ滞と診断した場合は、内科的治療にうつります。
基本的な組み合わせは、皮下補液と消化管の運動をよくするお薬です。
このとき使うお薬は消化管内ガスの貯留のしかたにより選択していくことになります。
場合によっては複数のお薬を併用します。
食欲不振が長く続いている子には、飼い主様による強制給餌が重要になってきます。
うさぎは身体の不調をギリギリまで隠す動物です。
また、うさぎは胃の構造上、犬や猫のように嘔吐することができません。
消化器の不調は食欲の低下や便の減少といった普段の生活の様子に現れることが多いです。
早期発見には、飼い主様による日頃の観察が大切です。

第19回日本獣医がん学会に参加してきました

今回のがん学会のメインテーマは「犬の鼻腔腫瘍」です。

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犬の鼻腔(鼻の中)腫瘍は犬の腫瘍症例の約1~2%を占める腫瘍の為多くはないが、日常的に遭遇する腫瘍です。特徴は進行性で経過が長く、鼻を中心にして周囲に病変が広がりますが、肺など遠くには転移しにくい腫瘍です。
<症状>
1,初期はくしゃみ、鼻水、時に出血はあっても抗生物質、止血剤、消炎鎮痛剤などで一時的に症状が治まることがあります。レントゲン検査では鼻の中(鼻道)に曇り(透過性の低下)が出ます。
2,中期では鼻から周囲が腫れた場合は顔の変形になり、喉が腫れた場合は食欲低下や呼吸に異常がでることがあります。
3,後期では脳の中に腫瘍が入った場合は、発作や異常行動を伴うことがあります。
<診断に不可欠な検査>
1,レントゲン検査
2,CT検査
3,生検(バイオプシー)
これらの検査は当院で可能となっております。
<治療>
標準的な治療には必ず放射線療法を組み込むことになります。
放射線治療には根治的療法(完全に治すことを目指す)として週5回で3~4週間放射線治療をする方法と、緩和的治療(症状を一時的に抑える)として週1回で3~4回放射線治療をする方法があります。また、緩和的放射線療法後に外科療法や化学療法(抗がん剤)、分子標的薬療法を併用する方法などがあります。
<今学会のトピックス>
放射線治療ができない場合に他の治療方法として、当院でも実施している治療や、今後検討できる治療方法を紹介します。
1,外科治療
超音波乳化吸引装置を用いて腫瘍の容積を減らす方法です。
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2,外科治療に分子標的薬を併用する方法、または分子標的薬単独の方法
腫瘍を超音波乳化吸引した後に分子標的薬であるリン酸トセラニブを投与するか、またはリン酸トセラニブ単独で治療する方法です。
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院長 吉田俊一 [ 獣医腫瘍科認定医Ⅱ種 ]
         淺田慎也 [ 獣医腫瘍科認定医Ⅱ種 ]

梅雨明け!

梅雨が明け本格的な夏シーズンに入ります。

この時期は「熱中症に気をつけましょう」というフレーズをよく目にしますが、
むしろ室内にいるペット達にとっては冷えすぎの方が問題です。
夏場の室内のペット達にとっての最適な温度は25℃~27℃・湿度は50%前後です。
実際にクーラー病としては呼吸器症状の「咳・くしゃみ・鼻水など」や消化器症状の
「食欲不振・下痢・嘔吐など」になりますので、このような症状になった時は早く受診
して下さい。
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獣医神経病学会2018に参加してきました。

630日〜71日に岩手県盛岡市で開催された獣医神経病学会2018に参加してきました。
今回のテーマは重症筋無力症と特発性脳炎でした。

重症筋無力症とは、神経から筋肉へ情報を伝達する部位の異常が原因で起こる病気で、3つの型に分類されます。
部分的に症状が出る型(局所型)では、顔の筋肉に異常が出るためまばたきができなくなったり、食道にも異常が出るため飲み込んだ食べ物が胃まで流れずに吐いてしまう(巨大食道)という症状がでます。
全身型では、体が疲れやすくなってしまうため歩き始めは普通ですが、少し歩くとふらついたりへたりこんでしまいます。
最後は劇症型というもので、急性に呼吸困難や運動障害がでます。
診断は血液検査で行い、原因となる抗体が検出できれば確定診断となります。しかしこの病気であっても血液検査で抗体が検出できないケースもあり、その場合はさらに詳しい検査が必要になり診断も困難となります。
この病気が診断された場合は内服による治療を行いますが、食道の症状が残るケースもあり、その場合はフードや水を吐くことによる誤嚥性肺炎を引き起こし死に至る場合もあります。
そのため早くこの病気を診断し、適切な治療と食事の指導を行うことが重要となります。

もう一つのテーマである特発性脳炎は小型犬で発症する病気で、若齢での発症が多いことが特徴です。そして中型〜大型犬ではほとんどみられません。
脳炎を発症するとてんかん発作や意識障害、失明など病変がある部位によって様々な神経症状が認められます。
診断は神経症状の存在とMRIによる画像診断で暫定的に行います。さらに血液検査により抗体を検出することも診断の補助になります。ただし脳の病気はその他の部位の病気と違い、組織検査が非常に困難であるため、生前に確定診断を行うことは困難です。
そして治療にはステロイドをはじめとする免疫抑制剤を用い、早期からしっかり薬を使うことがとても重要です。しかし中には治療に反応しない難治性のケースもあり積極的な治療にも関わらず死に至ることもあります。
このように特発性脳炎は怖い病気ですが、近年の研究で小麦の摂取が発症に関係している可能性がわかりました。そのため脳炎が疑われた場合は、積極的な内科治療に加えて適切な食事管理も必要となる可能性があることが新たにわかりました。

いずれも比較的まれな病気ですが(特に重症筋無力症)、特徴的な症状や好発する犬種の場合は早期に検査を行い、特発性脳炎の場合は早期の治療が、重症筋無力症の場合は自宅でのケアが重要となるため、少しでも飼い主様の力になれるよう頑張りたいと思います。

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淺田慎也

今月の病気① 光線温熱化学療法(PHCT)

今月より1カ月に2回「今月の病気」と称して当院獣医師が自分の得意とする分野で病気について解説します。

光線温熱化学療法(PHCT)                    院長(総合科)吉田俊一  獣医腫瘍科認定医Ⅱ種
 光線温熱化学療法はガンに対する新しい治療法(先端医療)です。
 食生活や飼育環境の変化、また予防医学の進歩によりペットの寿命は飛躍的に延び、それに伴い病気も多様化しています。その中でもとりわけガンは人と同様にペットの死因のトップになり、その治療法は重要なテーマとなっています。
 ガンの治療は外科手術療法、化学療法(抗がん剤治療)、放射線療法が人と同じく3大治療と言われますが、それ以外にも免疫療法、温熱療法、遺伝子療法などがあります。
 今回紹介します光線温熱化学療法は温熱療法に化学療法を加えたものです。具体的にはインドシアニングリーン(ICG)修飾リポソーム(ICG-Lipo)を血管内に投与し腫瘍組織内に蓄積させた後、外部より光照射(レーザー)する方法です。
 *インドシアニングリーン(ICG)とは
  インドシアニングリーンは医学領域では胆管道系検査薬として使用されてきた薬剤で安全性は十分に認識されています。本剤は800nmの光を吸収して発熱する性質(温熱効果)と600~800nmの光に反応して活性酸素を誘導する性質(光線力学的効果)が分かっています。
 *インドシアニングリーン修飾リポソーム(ICG-Lipo)とは
  細胞膜と同じ材料で作られた小さな気泡(小胞)をリポソームと言い、このリポソーム内に抗がん剤など種々の物質を内包させ、これをICGに結合させたものです。
ラブラドールレトリバーMIX 2002.8.1生 避妊雌 21Kg
 左眼下と頬粘膜の腫瘍。CT検査により鼻の中(鼻腔)及び目のくぼみの底(眼窩)に腫瘍の広がり(浸潤)を確認。
 治療は外科手術の対象とならない顔の広範囲の腫瘍でかつ頻回全身麻酔を必要とする放射線治療は高齢により回避した結果、光線温熱化学療法に加え免疫療法(丸山ワクチン)とオゾン療法を行った。
1.顔の腫瘍の様子
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2.CT検査結果
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3.治療の様子
 1)点滴(ICG-Lipo)は60分を一週間毎に3回実施
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 2)レーザー照射(冷やしたジェルを入れた袋越しに毎日~週3回照射)
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 3)オゾン療法(肛門より注入)
IMG_3707.JPGのサムネール画像
 *オゾン療法とは
 人の医学分野ではヨーロッパ特にドイツを中心に治療が行われています。オゾンの殺菌作用だけでなく免疫調整作用、消炎鎮痛作用、抗がん作用による治療効果をあげています。
 動物では肛門からオゾンガスを注入することが多く、全く痛みや不快感がないのが特徴です。

7月の飼い主セミナーのお知らせ

☆7月のセミナーの日程&テーマ☆

・7月21日(土)  犬や猫を取り巻く環境 私たちの環境

☆今後のセミナーの日程&テーマ☆
・8月18日(土)  犬の予防を考えた犬との生活‐問題点の改善について‐
・9月15日(土)  あなたは犬派?猫派?
・10月20日(土) 犬を飼う前に考えよう‐さまざまな犬種について‐
〇時間 午後7時~9時まで
〇場所 吉田動物病院 アニマルケアセンター1階
〇講師 小西 伴彦先生 当院インストラクター
    ドッグサポート「plus Wan犬のしつけ方教室」 主宰
    一般社団法人ふくい動物愛護管理支援センター協会(FAPSC)代表理事
〇受講料 1回1人1000円 小学生以下無料
☆参加希望の方は受付又はお電話でご予約下さい
※参加受付の締め切りは前日です。
※ワンちゃん・ネコちゃんはお留守番でお願いします。
ネコちゃんの話を含むセミナーは7月21日・9月15日になります

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