漢方で猛暑を乗り切ろう!
WJVF ( West Japan Veterinary Forum ) 第9回大会に参加しました
今回の学会では犬猫の肺水腫に関する講演に加え、腎不全に関する講演を聞いてきました。
心臓疾患が原因の肺水腫治療には利尿剤が欠かせません。肺が水浸しで呼吸困難をおこし、まさに命に関わる状態になるのが肺水腫です。ですが、利尿剤の使用は腎臓に負担をかけてしまいます。
いかに腎臓への負担を最小限にしつつ肺から水を抜くか、ギリギリの戦いをすることになります。
これまでの診断治療方法を覆す様な目新しい内容ではありませんでしたが、改めて肺水腫の緊急時の対応と腎不全を見直すきっかけになりました。
肺水腫を起こす可能性の高い疾患に僧帽弁閉鎖不全症がありますが、この疾患はチワワなどの小型犬によく見られます。講師の先生のお話の中で、肺水腫を発症するきっかけで意外と多いものに、「高塩分食の摂取」があるそうです。もしお家のワンちゃんがこの病気でしたら、人の食べ物、特に味のついたものにはどうか気をつけてください。(もちろん、この病気の子でなくても人の食べ物の多くは犬や猫の健康上よくないものが多いので与えるべきではありませんが)
ねだられるとつい、「ちょっとなら・・・」と与えてしまいがちですが、本当にちょっとでも肺水腫を誘発することがあるとのこと。ほんの一刻の喜びが、命に関わる重大な事態になりうることを心に留めて置いていただければと思います。
阿部素子
今回のがん学会のメインテーマは「犬の鼻腔腫瘍」です。
6月30日〜7月1日に岩手県盛岡市で開催された獣医神経病学会2018に参加してきました。
今回のテーマは重症筋無力症と特発性脳炎でした。
重症筋無力症とは、神経から筋肉へ情報を伝達する部位の異常が原因で起こる病気で、3つの型に分類されます。
部分的に症状が出る型(局所型)では、顔の筋肉に異常が出るためまばたきができなくなったり、食道にも異常が出るため飲み込んだ食べ物が胃まで流れずに吐いてしまう(巨大食道)という症状がでます。
全身型では、体が疲れやすくなってしまうため歩き始めは普通ですが、少し歩くとふらついたりへたりこんでしまいます。
最後は劇症型というもので、急性に呼吸困難や運動障害がでます。
診断は血液検査で行い、原因となる抗体が検出できれば確定診断となります。しかしこの病気であっても血液検査で抗体が検出できないケースもあり、その場合はさらに詳しい検査が必要になり診断も困難となります。
この病気が診断された場合は内服による治療を行いますが、食道の症状が残るケースもあり、その場合はフードや水を吐くことによる誤嚥性肺炎を引き起こし死に至る場合もあります。
そのため早くこの病気を診断し、適切な治療と食事の指導を行うことが重要となります。
もう一つのテーマである特発性脳炎は小型犬で発症する病気で、若齢での発症が多いことが特徴です。そして中型〜大型犬ではほとんどみられません。
脳炎を発症するとてんかん発作や意識障害、失明など病変がある部位によって様々な神経症状が認められます。
診断は神経症状の存在とMRIによる画像診断で暫定的に行います。さらに血液検査により抗体を検出することも診断の補助になります。ただし脳の病気はその他の部位の病気と違い、組織検査が非常に困難であるため、生前に確定診断を行うことは困難です。
そして治療にはステロイドをはじめとする免疫抑制剤を用い、早期からしっかり薬を使うことがとても重要です。しかし中には治療に反応しない難治性のケースもあり積極的な治療にも関わらず死に至ることもあります。
このように特発性脳炎は怖い病気ですが、近年の研究で小麦の摂取が発症に関係している可能性がわかりました。そのため脳炎が疑われた場合は、積極的な内科治療に加えて適切な食事管理も必要となる可能性があることが新たにわかりました。
いずれも比較的まれな病気ですが(特に重症筋無力症)、特徴的な症状や好発する犬種の場合は早期に検査を行い、特発性脳炎の場合は早期の治療が、重症筋無力症の場合は自宅でのケアが重要となるため、少しでも飼い主様の力になれるよう頑張りたいと思います。
淺田慎也