獣医師コラム

愛犬の足腰が弱ってきた?|犬の骨関節炎の症状と治療法

最近、愛犬が歩き出すときに時間がかかる、以前よりも歩き方がぎこちなくなってきたと感じることはありませんか?

 

年齢を重ねるにつれ、愛犬も人と同じように加齢に伴う病気にかかりやすくなります。そのなかでも「骨関節炎」は特に多く見られる疾患のひとつで、実は成犬の20%以上が骨関節炎を抱えているともいわれています。

 

この病気は慢性かつ進行性で、放置すると症状が悪化し、痛みが増してしまいます。すると、食欲が落ちたり元気がなくなったりして、次第に体力も低下してしまうことが少なくありません。だからこそ、早期の発見と適切なケアがとても大切です。

 

今回は、犬の骨関節炎にはどのような症状が現れるのか、そしてどのような治療法があるのかをわかりやすくご紹介していきます。愛犬が少しでも健やかに過ごせるよう、今一度、足腰の健康を見直してみましょう。

 

 

■目次
1.骨関節炎ってどんな病気?
2.愛犬の様子がおかしい?骨関節炎のサイン
3.骨関節炎の予防と対策
4.骨関節炎の治療法
5.まとめ

 

骨関節炎ってどんな病気?

骨関節炎は、主に関節軟骨の変性が進行していくことで起こる関節の病気です。関節は「関節軟骨」や「関節腔」、「関節液」、「関節包」、そして「靭帯」といったさまざまな組織で構成されています。

 

 

このうち、特に重要なのが関節軟骨です。この軟骨は、骨と骨が直接ぶつからないようにクッションの役割を果たし、関節の滑らかな動きを支えてくれています。

 

しかし、この関節軟骨は残念ながら一度傷つくと元通りに修復されにくいという特徴を持っています。そのため、加齢や怪我によってダメージを受けると、修復が追いつかず、炎症が徐々に進行してしまうのです。

 

この進行によって犬は痛みや不調を感じるようになり、症状が悪化すると普段の生活にも支障が出てしまいます。

 

 

愛犬の様子がおかしい?骨関節炎のサイン

骨関節炎を発症している犬は、立ち上がるのに時間がかかったり、階段の昇り降りを嫌がったりすることがあります。

 

また、他にも歩く速度が遅くなる、散歩を嫌がる、座り込むことが増える、片足をかばうような歩き方をするようであれば、骨関節炎の可能性が考えられます。

 

これらのわかりやすい症状が現れる前の段階では、「なんとなく元気がない」「以前ほど活発でなくなった」「ときどき痛そうにキャンと鳴く」といった小さな変化が見られることもあります。

こうしたサインは見逃されがちですが、体のどこかに痛みがあることが原因かもしれません。

 

骨関節炎は慢性的な痛みを伴い、愛犬にとって大きなストレスとなる病気です。早めに異変に気づき、痛みがひどくなる前に適切な治療を始めることで、症状を上手にコントロールしやすくなります。

「最近、少し動きが鈍い」「少し元気がないかも」と感じたときには、早めに獣医師に相談しましょう。

 

 

骨関節炎の予防と対策

愛犬の骨関節炎を予防するためには、適切な体重管理が欠かせません。

体重が増えると、その分だけ関節に大きな負担がかかり、関節炎の発症や進行が早まることがあります。

 

そのため、日頃から適度な運動を取り入れ、散歩やドッグランなどで体を動かす機会をつくってあげることが大切です。

 

また、グルコサミンコンドロイチンを含むサプリメントや、オメガ脂肪酸といった抗炎症成分を含むサプリメントも、関節を守るために役立ちます。

 

サプリメントについては、愛犬に合ったものを選ぶためにも、獣医師に相談しながら取り入れると安心です。

 

そして、日常的に愛犬の様子をよく観察することも重要ですが、それだけでなく定期的に動物病院で健康チェックを受けることも大切です。

 

病院では触診やレントゲンによって関節の状態を詳しく確認でき、関節痛の兆候を早期に発見し、必要に応じて治療を開始することができます。

 

 

骨関節炎の治療法

愛犬の骨関節炎を治療するためには、まず痛みのある部位を特定することが重要です。

そのため、全身を丁寧に触診し、関節の腫れや左右の筋肉の差、動かせる範囲に異常がないか、曲げ伸ばしに痛みを感じていないかなどを慎重に確認します。

 

特に肘や膝は骨関節炎が起こりやすい場所なので、念入りなチェックが欠かせません。

 

痛みのある場所が特定できた場合、その箇所のレントゲンを撮り、関節の変形や隙間が狭まっていないかなどを確認し、症状の程度を評価します。

 

治療には、NSAIDs(非ステロイド系消炎鎮痛薬)と呼ばれる鎮痛剤や、骨関節炎の症状を軽くするカルトロフェンがよく使用されます。

また、新しいタイプの薬で1回の注射で痛みが1ヶ月緩和できる方法もあります。

 

薬物治療と合わせて、生活環境の見直しも大切です。たとえば、床を滑りにくい素材にしたり、段差にスロープを付けたりして、関節に負担がかかりにくい環境を整えてあげましょう。

 

また、リハビリも欠かせない治療法です。痛みで動かしにくくなった関節を少しずつ動かすことで、機能の維持や回復を目指します。

 

リハビリの内容や負荷は症状に合わせることが大切なので、獣医師の指導のもとで進めるようにしましょう。薬を飲むだけでなく、適切なリハビリを取り入れることで、より効果的にケアできます。

 

早めに痛みを抑えた方が、症状のコントロールもスムーズです。もし愛犬に骨関節炎の疑いがある場合は、早期治療を心がけてあげることが、快適な生活を支えるために重要です。

 

 

まとめ

骨関節炎は、一度発症するとゆっくりと進行していく病気です。

 

だからこそ、日頃からの生活習慣や適度な運動で、できる限り予防を心がけることが大切です。また、定期的な健康診断を受けることで、早期発見・早期対策につなげることができます。

 

もし骨関節炎が見つかった場合には、愛犬に合った治療法を獣医師と相談しながら進め、生活の質を保てるようにサポートしていきましょう。

 

 

富山県射水市の動物病院 吉田動物病院

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