【獣医師監修】犬のしつけ、あなたは間違っていませんか? |正しいしつけで愛犬との絆を深める方法
愛犬と一緒に快適で穏やかな毎日を過ごすためには、しつけがとても大切です。しつけは、ただルールを教えるだけでなく、愛犬との信頼関係を深め、絆を強める大切な時間でもあります。
ただ、しつけにはコツがあり、間違った方法を取ってしまうと、期待していた効果が得られないばかりか、かえって愛犬にストレスを与えてしまうこともあります。その結果、問題行動につながることもあるため、慎重に進めることが大切です。
今回は、愛犬とより良い関係を築くためのしつけのポイントについて詳しくご紹介します。
■目次
1.しつけの基本|まず押さえるべき2つのポイント
2.犬のしつけでよくある間違い5選
3.正しいしつけの方法4つのポイント
4.しつけの中で特に注意すべき行動と対処法
5.まとめ
しつけの基本|まず押さえるべき2つのポイント
愛犬との生活をよりスムーズに、そして楽しくするためには、しつけが欠かせません。ここでは、しつけを始める際にまず押さえておきたい2つの基本ポイントをご紹介します。
<名前を覚えてもらう>
しつけをする上で、愛犬が飼い主様にしっかりと注目することが重要です。そのためには、まず愛犬が自分の名前を覚え、呼ばれたら反応できるようになることが大切です。
名前を覚えてもらうためには、「名前を呼ばれると良いことがある」と感じさせることがポイントです。
例えば、「〇〇、おはよう」と日常的に名前を呼びかけることや、食事、おやつ、遊びに誘う前に名前を呼ぶように意識しましょう。こうすることで、愛犬は名前を呼ばれることに対してポジティブな印象を持つようになります。
<アイコンタクトを取る>
しつけの基本は、愛犬が飼い主様に集中し、指示に従える状態を作ることであり、そのために欠かせないのが「アイコンタクト」です。
犬と目が合うことで、飼い主様の指示にしっかりと耳を傾け、しつけがスムーズに進むようになります。
アイコンタクトの練習はシンプルです。
愛犬の名前を呼び、目が合ったらすぐに褒めたり、おやつをあげたりする、ということを繰り返しましょう。
アイコンタクトが取れるようになったら、少しずつその時間を長くして、集中力を育んでいきます。
犬のしつけでよくある間違い5選
しつけの際によく見られる間違いによって、逆に犬との信頼関係が損なわれてしまうこともあります。ここでは、よくあるしつけの間違いとその改善ポイントをご紹介します。
1. 体罰によるしつけ
犬のマズルをつかむ、仰向けにして押さえつける、叩くなどの体罰は、犬に強いストレスや恐怖心を与え、攻撃性を引き起こすことがあります。また、これによって飼い主様との信頼関係が崩れてしまうことにもなるため、絶対に行ってはいけません。
もし犬が吠えたり噛んだりといった問題行動をした場合は、無視をするか、その場を離れることで対処するのが効果的です。
2. 一貫性のない叱り方
犬にとって、分かりやすく一貫したルールであれば理解することができます。しかし、同じ行動に対して叱る時と叱らない時があると、犬は混乱してしまい、何が良いことで何が悪いことなのか分からなくなってしまいます。
叱る際には、短く決まった言葉(「ダメ!」や「いけない!」)を使い、真剣な表情と低めの声で伝えるようにしましょう。
3. タイミングを逃した指摘
犬は、時間が経ってから叱られても、なぜ叱られているのかを理解できません。叱るべきタイミングは、問題行動をした瞬間か、その直前が理想的です。そして、犬がその行動をやめたら、すぐにしっかりと褒めてあげることが大切です。
4. 過度な甘やかし
飼い主様が犬の要求を全て受け入れる、悪いことをしても叱らない、おやつやご褒美を与えすぎてしまうなど、普段から過度に甘やかすことで犬は「自分の要求は全て通るもの」と誤って学習し、やりたい放題になってしまいます。
普段から愛犬に対して愛情をもって優しく接することは大切ですが、全ての要求を受け入れるのではなく、問題行動にはしっかりと対処する姿勢を持つことが必要です。
5. 犬の個性や成長段階を無視したしつけ
犬も人間と同じで、学習速度や成長のペースはそれぞれ異なります。「できないから」といって焦らず、根気よく続けることが大切です。
また、トレーニング中は愛犬の体調や反応に目を配り、疲れた様子が見えたら適度に休憩を取り入れることも忘れないようにしましょう。
正しいしつけの方法4つのポイント
効果的なしつけを行うための4つのポイントをご紹介します。
1. ポジティブな強化
しつけで大切なのは、愛犬に「〇〇をしたら褒められた」=「良いことがあった」とポジティブな経験を通して学ばせることです。
褒める際には、普段とは違うトーンで声をかけ、優しく明るい声で「よくできたね!」と伝えると、犬はそれが良い行動だと理解しやすくなります。
2. 一貫性のある対応
家族全員で同じ対応をすることも、しつけの成功には欠かせません。ある人が叱っても、別の人が同じ行動を許してしまうと、犬は混乱してしまいます。問題行動に対する対応や褒め方、叱り方を家族で事前に話し合い、ルールを統一しておくことが大切です。
また、叱る時や指示を出す時の言葉も統一しましょう。「ダメ」「いけない」といった叱る言葉や、「お座り」「待て」などの指示は、全員が同じ言葉を使うことで、犬がスムーズに理解できるようになります。
3. タイミングの良い指導
犬にとって、褒めたり叱ったりするタイミングは非常に重要です。問題行動をした瞬間に叱り、正しい行動ができた瞬間に褒めることで、犬は自分の行動と結果を結びつけることができます。
タイミングを逃さずに対応することで、しつけの効果が格段に上がります。
4. 個性に合わせたアプローチ
犬にはそれぞれ個性があり、犬種による特性も異なります。そのため、愛犬の性格や特徴に合わせたしつけが必要です。普段の行動や反応をよく観察し、どんな性格なのかを理解しておくことが重要です。
「物覚えが早い」「穏やかで友好的」「素直で従順」といった性格の犬は、トレーニングを楽しみながら行えることが多く、しつけがしやすい傾向にあります。
一方で「警戒心が強い」「自立心が旺盛」「非常に賢い」などの性格の犬では、飼い主様の指示に従いにくいことがあります。
このような場合でも、甘やかさずに、ダメなものはダメという毅然とした態度で、根気強く取り組むことが大切です。
しつけの中で特に注意すべき行動と対処法
愛犬のしつけでは、特に気を付けたい行動があります。ここでは、よく見られる問題行動とその対処法について詳しく説明します。
吠え癖
【原因】
犬が吠える理由は、飼い主様への要求や興奮、または威嚇や警戒心によるものが多いです。
【対処法】
要求吠えに対しては、絶対に反応はせず、要求に応えない姿勢を見せることが大切です。反応してしまうと、犬は「吠えれば願いが叶う」と学習してしまいます。
興奮による吠えに対しては、犬が落ち着くまでは何も反応せず、落ち着いて吠えることをやめた瞬間にしっかりと褒めてあげましょう。
威嚇や警戒による吠えに対しては、「吠える必要はない」と学習させることがポイントです。
例えば、インターホンの音に対して吠える場合は、音が鳴った瞬間におやつを与えることで、「インターホンの音=良いことがある」と関連付ける方法が効果的です。
また、他の犬や人に吠える場合は、対象が近づいてきたらおやつをあげたり、名前を呼んだりして気をそらすことで吠えないようにし、静かにできたらたくさん褒めてあげましょう。
噛み癖
【原因】
本能的な攻撃や防御、興奮、恐怖心、ストレスなどによって噛むという行動を取ります。
【対処法】
基本的には、噛ませないことが大切です。遊ぶ際には、手を噛ませないようなおもちゃの活用や、愛犬がどんな状況で噛むのかを日頃から観察し、その場面を極力避けるようにしましょう。
もし噛まれてしまった場合は、無視をするか、毅然とした態度で低い声で叱り、その後すぐに部屋を離れるなどして、噛んでも反応がないことを伝えます。これにより、噛む行動を抑えることが期待できます。
トイレ以外での排泄
【原因】
トイレの場所を正しく認識していない、叱られるのを避けるために隠れて排泄してしまう、またはトイレ自体が気に入らないことが考えられます。
【対処法】
トイレのしつけで重要なのは、以下の3つです。
・失敗させない
・失敗しても叱らない
・成功したら褒める
まずはケージの中全体にトイレシートを敷いておき、愛犬が排尿しそうなタイミングで「ワンツー・ワンツー」などの排泄コマンドを出します。
シートの上できちんと排泄ができたら、たくさん褒めてご褒美をあげたり、ケージから出して遊んであげたりしましょう。
このように繰り返していくことで、「トイレシートで排泄をすると良いことがある」と愛犬に学習させることができます。
まとめ
愛犬に正しくしつけを行うためには、まずは信頼関係を築き、愛犬の性格をしっかりと理解することが大切です。
日頃から愛犬との時間を大切にし、スキンシップを取りながら、少しずつお互いの理解を深めていきましょう。
また、しつけは一度や二度で身につくものではなく、長い目で見て根気よく取り組むことが必要です。愛犬との快適な生活を目指して、焦らず、楽しみながらトレーニングを続けていきましょう。
もしも、しつけに関しての不安や悩みがある場合には、お気軽に当院までご相談ください。
富山県射水市の動物病院 吉田動物病院
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