獣医師コラム

大切な家族との別れ |ペットロスを乗り越えるための動物病院がおくる心の処方箋

いつかは訪れる愛するペットとのお別れについて、不安に感じている飼い主様も多いのではないでしょうか。

 

特に、愛するペットとの別れによって引き起こされるペットロスは、飼い主様にとって非常に大きな精神的なダメージを与える深刻な問題です。

 

当院では、飼い主様のお気持ちに寄り添い、丁寧にお話をお聞きすることで、少しでも心の重荷が和らぐよう努めています。

 

今回は、ペットロスの概要や心と体への影響、乗り越え方について解説します。

 

 

■目次
1.ペットロスとは?愛する家族を失ったときの心の痛み
2.ペットロスによる心と体への影響
3.ペットロスの段階|悲しみのプロセスを理解する
4.ペットロスケアの実践|自分でできる心のケア
5.動物病院ができるペットロスサポート
6.まとめ

 

ペットロスとは?愛する家族を失ったときの心の痛み

ペットロス(ペットロス症候群)とは、愛するペットとの別れや突然の死によって引き起こされる、精神的・身体的な不調のことを指します。

 

犬や猫はもちろん、うさぎやインコ、ハムスター、さらには爬虫類まで、近年ではさまざまな動物が家族の一員として迎えられています。

 

これらのペットたちは、パートナーや子供、友人のような存在であるだけでなく、心の支えや癒しの象徴として、時には家族以上の存在となることも少なくありません。そのため、ペットを失うことによる喪失感や虚無感は、言葉では言い表せないほど深いものです。

 

さらに、ペットの寿命が延び、一緒に過ごす時間が長くなることで、その分愛情も深まり、ペットは飼い主様にとってかけがえのない存在となります。

 

だからこそ、ペットを失ったときの悲しみは非常に大きく、多くの方がペットロス症候群に陥ってしまうのです。

 

ペットロスによる心と体への影響

ペットロスに陥ってしまうと、心の中にさまざまな変化が生じることがあります。精神面で特に見られる影響は次のようなものです。

 

・突然、悲しみがこみ上げてきて、涙が止まらなくなる

・何をしても落ち着かない

・物事に集中できなくなる

・突然パニックに陥る

・何事にも悲観的になる

・無気力な状態が続く

・強い孤独感に襲われる

・ペットを失ったことへの罪悪感に苦しむ

・幻覚や幻聴を感じることがある

・うつ病の症状が現れる

 

また、精神面だけでなく、身体面にも次のような不調が現れることがあります。

 

・不眠などの睡眠障害

・消化器系の不調(下痢、便秘、嘔吐、吐き気、腹痛、胃潰瘍など)

・摂食障害(食欲不振、過食)

・頭重感や頭痛

・腰痛

・肩こり

・発熱

・手足のしびれ

・めまい

・難聴

・倦怠感

・全身のかゆみ(蕁麻疹など)

 

このように、心と体の両方に影響が及ぶことで、日常生活に支障をきたすことも少なくありません。

 

ペットロスの段階|悲しみのプロセスを理解する

ペットロスを経験する中で、多くの方が「悲しみの5段階モデル」と呼ばれる心のプロセスを経て、少しずつ立ち直っていくと言われています。

 

「否認」

最初に訪れるのは、ペットを失ったという現実を受け入れられず、まるでそれが事実ではないかのように感じる段階です。この時期にはペットの死を否定し、心が現実を拒絶してしまいます。

 

「怒り」

次に訪れるのは、後悔や自責の念が強まり、怒りへと変わる段階です。

「なぜもっと早く病気に気づけなかったのか」「もっと早く病院に連れて行けばよかった」「もっと一緒に過ごしてあげればよかった」といった自分への怒りが湧き上がり、時には「獣医師の治療が適切でなかったのではないか」など、他人に対する怒りが生じることもあります。

 

「交渉」

その次に訪れるのは、現実から逃れようとする段階です。「あの子を生き返らせてください」といった現実的ではない願いを、神様や何かにすがることで一時的にでも現状を変えたいと願う気持ちが強くなります。

 

「抑うつ」

どんなに願ってもペットは戻ってこないことが分かり、深い悲しみや虚無感にとらわれる段階です。この時期は特に苦しく、辛いもので、場合によってはうつ病の症状が現れることもあるため、注意が必要です。

 

「受容」

最後に、少しずつペットとの別れを受け入れていく段階に入ります。ペットのことを思い出すと、悲しみがこみ上げることはありますが、生前の元気な姿や楽しかった日々を良い思い出として受け入れ、日常生活に戻っていくことができます。

 

このような過程を経て、人はペットロスから少しずつ立ち直っていきます。しかし、誰もが同じ順序で進むわけではなく、段階が前後したり、何度も「否認」や「交渉」を繰り返したりすることもあります。「受容」の段階に至るまでには時間がかかることもあるでしょう。

 

ペットとの幸せな時間を大切に思い出しながら、無理をせず、自分の気持ちと向き合っていくことが大切です。

 

ペットロスケアの実践|自分でできる心のケア

ペットロスの中で、「早く元気にならなければ」「頑張らなければ」と無理をすることは、かえって逆効果になってしまうことがあります。大切なペットを亡くして悲しいときには、無理に感情を抑え込まず、思いきり泣くことがとても大切です。

 

その後、少しずつペットを失った現実を受け入れ始めたら、ペットが使っていた物や写真、動画を見たり、家族や親しい友人にペットの思い出を話したりすることで、ペットと過ごした時間を良い思い出として振り返ると、気持ちの整理が進むかもしれません。

 

ペットとの思い出話をすることや、他の人の話を聞くことで、心の整理がつきやすくなり、孤独感も和らげることができます。

 

また、日記を書くことも心のケアとしておすすめです。ペットとの思い出や、ペットを失った悲しみを文章に書き起こすことで、自分の感情を客観的に見つめ直し、冷静さを取り戻すことができます。

 

さらに、心の平穏を取り戻すための方法として、ペットの絵を描いて感情を表現するアートセラピーも効果的と言われています。自分の心に寄り添いながら、無理をせず、少しずつ心のケアを実践してみてください。

 

動物病院ができるペットロスサポート

当院では、飼い主様の気持ちに寄り添い、飼い主様に対して必要な助言や支援を行うことが非常に大切だと考えています。

 

私たち獣医師も、皆さまと同じく大切なペットと暮らしており、何度もペットを見送った経験があります。そのため、ペットロスで苦しむ飼い主様に対して、共感しながら支援を行うことができます。飼い主様のお話をじっくりとお聞きし、少しでも悲しみが和らぐように努めています。

 

また、いつか新しいペットを迎えたいと自然に思えるようになることも、ペットロスを乗り越える一つの方法です。新しい家族を迎えることは、決して亡くなった子への「裏切り」ではありません

 

「あの子は〇〇だったけれど、この子はこんな性格なんだ」と、新しいペットを通して亡くなった子を思い出すことができ、次第に「あの子と一緒に過ごせて本当に幸せだった」という感謝の気持ちが芽生えてくるでしょう。そのため、新しい子を迎えることに罪悪感を覚える必要はありません。

 

まとめ

いつかは必ず、大切なペットとのお別れの時が訪れます。その愛する存在を失うことによる喪失感は、計り知れないものです。ペットが亡くなった後に気持ちが落ち込んでしまうのは、自然なことです。

 

ペットロスから立ち直るためには、ペットと過ごしたかけがえのない日々を大切に振り返りながら、無理をせずに少しずつ自分の気持ちと向き合うことが大切です。

私たちも、ペットロスを乗り越えるためのお手伝いをいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

 

富山県射水市の動物病院 吉田動物病院

TEL:0766-52-1517

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