東洋医学の推拿(すいな)・按摩(あんま)|自宅でもできる健康法
推拿(すいな)、按摩(あんま)は中国の伝統的な整体法で、道具を使わずに手を使って行う東洋医学的な治療のことを指します。体の特定の部位に対して、押す、揉む、叩く、摩るなどの手技を施し、体の疲労を解消し、体のバランスを整えることを目指します。
一般的には、これらの治療は人間に対して行われますが、動物に対しても同様の手法が適用されることがあります。特に、鍼灸治療後に推拿や按摩を施すことで、より効果的に動物たちの疼痛の緩和や体調の改善を図ります。
動物たちにとって推拿や按摩を用いた治療は、副作用が少なく、痛みを伴わないため、ストレスや負担が少なく済むというメリットがあります。
今回は、東洋医学的な治療法である推拿、按摩についてご紹介していきたいと思います。
■目次
1.推拿・按摩を検討する理由
2.推拿・按摩の効果
3.推拿・按摩を受けられない状況
4.施術の流れ
5.実際の事例紹介
6.まとめ
推拿・按摩を検討する理由
推拿や按摩は手を使って行う治療法であるため、薬品を使用せず、外科手術を行う必要もありません。副作用のリスクが非常に低く、安全に施術を受けられることから、シニア期や体力が落ちている動物、痛みに敏感な動物などにおすすめの治療法です。
さらに、鍼灸のように特別な道具を用意する必要がないため、飼い主様が手技を覚えて、自宅で実践していただくことも可能です。
愛犬や愛猫が、ケガや病気で苦しんでいるのに何もしてあげられないのが辛い、と感じる飼い主様は多くいらっしゃいます。ご自宅で行える推拿や按摩を通じて飼い主様もケアに関わることができるため、安心感や充実感を得ることができるでしょう。
推拿・按摩の効果
推拿や按摩は、東洋医学に基づいた手技療法で、体の様々な部位に対する手技を通じて体内のエネルギーバランスを調整し、自然治癒力を促進することを目的としています。以下は、推拿や按摩が及ぼす一般的な効果です。
・血行促進:体を揉む、さするなどの手技は血流を良くし、組織への酸素と栄養素の供給を改善します。これにより、疲労回復や痛みの緩和が期待できます。
・痛みの軽減:叩く、押すなどの手技がツボや特定の筋肉グループを刺激することで、局所的な痛みやこわばりを和らげる効果があります。
・リラクゼーション:手技による筋肉のマッサージはリラクゼーション効果をもたらし、ストレスや緊張の軽減に役立ちます。
・自然治癒力の向上:全体的に体のバランスを整えることで、体の自然な治癒力が活性化します。
推拿・按摩を受けられない状況
推拿や按摩は多くの病気に対して効果を発揮してくれますが、すべての状態に適用できるわけではありません。
特定の病状や状況下では、これらの手技による治療が逆に患者に害を及ぼす可能性があるため、以下のような状況では推拿や按摩を避けましょう。
・高熱がでている
・急性の伝染病
・やけどの箇所
・悪性腫瘍の箇所
・重症な病気
施術の流れ
基本的な流れとしては、鍼灸治療を行った後に推拿・按摩を行います。
また、一般的なマッサージは下から上へ向かって行いますが、推拿や按摩は首から始めて体の下に向かって進めていきます。
首から施術を開始する理由は、この部分は緊張が集まりやすく、全身のリラクゼーションを促進する起点となるからです。手技はゆっくりと体の上部から下部へ移行し、リンパの流れと血流を促進して老廃物の排出を助けます。
実際の事例紹介
推拿や按摩は皮膚や筋肉に直接働きかけることもできるので、椎間板ヘルニアや関節炎といった運動器疾患の症状改善に特に効果を発揮します。
その他にも、様々な慢性的疾患にも有効で、元気がない、食欲不振、消化器系の問題(下痢や便秘)、咳、慢性腎臓病、膀胱炎、糖尿病などの幅広い症状や病気にも効果的です。
推拿や按摩の施術対象は基本的に犬と猫ですが、うさぎにも一定の効果が期待できます。実際に当院でも、うさぎの食欲不振に対して施術を行い、その症状が改善した事例があります。
まとめ
推拿や按摩をはじめとした東洋医学的な治療法は、適用範囲の広さと体への負担が少ないというメリットがあります。
具体的な診断名がついていない状態でも施術を行うことが可能ですので、「なんとなく体調が悪そう」や「シニア期で苦痛を感じているように見える」といった状態でも効果を発揮します。
ただし、すべての状態や病態に適しているわけではないため、推拿や按摩についてご興味がある方は、ぜひお気軽に当院までご相談ください。
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富山県射水市の動物病院 吉田動物病院
TEL:0766-52-1517
<参考>
これ1冊できちんとわかる 図解 東洋医学(マイナビ)