犬や猫における漢方薬や鍼灸など東洋医学について
東洋医学とは、漢方薬や鍼灸(しんきゅう)を用いた治療で、近年では獣医療領域でも、東洋医学の治療法が話題となっています。
しかし漢方薬や鍼灸治療というと、「体には優しいが効果がはっきりしない」や「効果が出るまでに時間がかかる」という印象をお持ちの飼い主様もいらっしゃるのではないでしょうか?
今回は、犬や猫の東洋医学について解説していきます。
■目次
1.東洋医学と西洋医学の違い
2.東洋医学のメリットや選択される場面
3.具体的な東洋医学の説明
4.まとめ
東洋医学と西洋医学の違い
東洋医学と西洋医学では、考え方や治療法が大きく異なります。
東洋医学は経験的な医学であり、四診(望診・聞診・問診・切診)といわれる東洋医学的診察法を基に犬や猫の今の状態を主観的に判断します。
つまり、犬や猫の状態が健康な状態からどのようにバランスを崩しているかを把握するのです。そして、漢方薬や鍼灸治療を用いて自己治癒力を高めることにより、その崩れたバランスを正し、健康な状態へと戻すように治療していきます。
一方、西洋医学は現代医学とも呼ばれ、犬や猫の今の状態を科学的および理論的に分析することで、症状の原因となっている病巣や病因を判明させます。そして、その原因を排除する治療を行うのです。
つまり、西洋医学は問診や触診だけでなく、血液検査やレントゲン検査などの客観的なデータも駆使して診断を行い、投薬や手術により、病巣や病因など体の悪い部分に直接アプローチすることで治療を行います。
東洋医学のメリットや選択される場面
東洋医学は、体を健康状態に戻すための自己治癒力を高める治療です。
そのため、「何となく調子が悪そう」「様子がおかしい」など、原因のはっきりしない症状や病態に対して用いられることがあります。
また、西洋医学では改善がみられない慢性疾患や長期間変化のない症状、病気として明確な症状がまだ現れていない「未病」といわれる状態において、犬や猫の自己治癒力を高め改善に向かわせるために選択されることもあります。
さらに、東洋医学を用いて自己治癒力を高めることにより、病気の進行や再発予防にも繋がります。
このように、西洋医学では治療法がない場面や、改善がみられない場面で用いられる以外にも、西洋医学と東洋医学を併用することで、治療効果の向上や副作用の軽減が期待できます。
東洋医学は個体差を重視し、体質や季節、周りの環境などを考慮しながら、愛犬や愛猫の状態に合わせた治療を行える上、自然成分の生薬を組み合わせた漢方薬、鍼灸などを使用するため、西洋薬と比較し副作用の少ないこともメリットの一つと言えます。
具体的な東洋医学の説明
犬や猫の東洋医学では、主に漢方や鍼灸(はりきゅう)などが用いられます。
■漢方薬について
漢方薬は自然の生薬から作られており、体質改善を得意とします。
西洋薬だけでは抑えきれなかった症状が漢方薬を併用することで、あっさり治ってしまった事例も沢山あります。
また、西洋薬を使用する際に、漢方薬を併用することで、西洋薬の副作用を軽減させたり、量や種類を減らしたりすることも可能です。
例えば、人では抗がん剤や抗生剤を使用する際に、併用が推奨されるさまざまな漢方薬があります。これらは薬の効果を高め、副反応である消化器障害や疼痛、免疫力低下、体温低下などの軽減や予防が期待されています。
このように、抗がん剤治療中であっても、犬や猫のQOL(生活の質)を高める補助になることも期待できます。
■鍼灸治療について
鍼灸は一般に「はりきゅう」または「しんきゅう」と呼ばれる治療で、病気や症状に適したツボに細い針を刺し、艾(もぐさ)を置いて燃焼させる方法です。
犬や猫においては、下記のようなケースで鍼灸治療が行われることがあります。
・椎間板ヘルニアではあるものの手術を選択しない場合や、手術適応外な場合、繰り返す症状の緩和、術後のリハビリなど
・脳神経疾患によるてんかん発作の緩和
・高齢による認知機能の低下
・腫瘍性疾患の緩和治療
・慢性疾患による食欲低下や体調不良、疼痛の改善 など
まとめ
東洋医学は、西洋医学で治療法がない場面や、改善がみられない場面で用いることができる治療法で、適切に使用すれば、はっきりとした目覚ましい効果を得ることもできます。
また、愛犬や愛猫の状態に合わせた治療を行える上、自然成分の生薬を組み合わせた漢方薬、鍼灸などを使用するため、西洋薬と比較し副作用は少ないというメリットがあります。すぐに効果が現れなくても、ゆるやかに体質を改善することが期待できる犬や猫に優しい治療法です。
富山県射水市の動物病院 吉田動物病院
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