獣医師コラム

犬の蛋白漏出(喪失)性腸症について|慢性的な下痢が見られたら注意

蛋白漏出(喪失)性腸症は、血液中の蛋白質が様々な原因により腸管へと流れ、体に種々の不調をもたらす病態です。犬に比較的よく見られ、重篤な場合には命に関わることもあります。

 

血液の中には、アルブミンやグロブリンという蛋白質が含まれており、血液の水分量を調整するほか、ホルモンや栄養素などを運搬したり、免疫に関わる働きも担っていたりします。

蛋白漏出性腸症では、特にアルブミンが低下しやすく、低アルブミン血症をよく引き起こします。

 

今回は、犬の蛋白漏出(喪失)性腸症について詳しく解説していきます。

 

 

目次
1.原因
2.症状
3.診断方法
4.治療方法
5.予防法や飼い主様が気を付けるべき点
6.まとめ

原因

犬に蛋白漏出性腸症を引き起こす主な原因は、腸リンパ管拡張症、胃腸型リンパ腫などの腫瘍、IBDと呼ばれる炎症性腸疾患などです。

その他には、寄生虫やウィルスによる感染性腸炎に起因することもあります。

 

あらゆる年齢や犬種で起こる可能性はありますが、ヨークシャー・テリアやアイリッシュ・セッターなどの犬種に発生しやすいといわれています。

 

症状

最もよく見られる症状は慢性的な下痢です。しかし、犬によっては下痢を示さないこともあります。

その他の症状としては、嘔吐、元気・食欲の低下、体重減少、脱水などが見られ、さらに病状が悪化すると、お腹に水がたまったり(腹水)、足にむくみが見られたりすることもあります。また、胸に水がたまり(胸水)呼吸が苦しくなることもあります。

 

診断方法

血液検査で低蛋白血症(低アルブミン血症)を確認できます。低アルブミン血症は、蛋白漏出性腸症以外でも見られることがあるため、他の病気と鑑別するために、尿検査を追加することもあります。

レントゲン検査やエコー検査では、腸の炎症状態を確認できます。

このような検査結果から蛋白漏出性腸症が強く疑われる場合には、その原因を探るため、最終的に内視鏡による採材を行い病理検査で診断する場合もあります。

 

治療方法

下痢や嘔吐、脱水、腹水や胸水などが見られる場合には、犬の苦痛を緩和する治療を早急に行います。また、必要に応じて腸の炎症を軽減する治療も行います。

さらに、脂肪分を制限したフードによる食事療法も同時に開始します。

そして、状態に合わせ各原因に対する治療(例えば、リンパ腫に対しては抗がん剤治療など)も開始します。

 

予防法や飼い主様が気を付けるべき点

蛋白漏出性腸症を予防することはできませんが、日頃から便の状態を確認するよう心がけましょう

時々下痢はするけれど、食欲も元気もあるからと様子をみた結果、このような病態が進行してしまうことは少なくありません。手遅れにならないよう、早めのケアが大切です。

 

まとめ

犬の蛋白漏出性腸症は、様々な要因により起こるため、意外と身近で起こる可能性があります。他の病気と同様に、早期発見・早期治療を行うために定期的に健康診断を受けましょう。

 

富山県射水市の動物病院 吉田動物病院

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