獣医師コラム

高齢猫の消化器型リンパ腫について|猫によくみられる腫瘍の1つ

猫によくみられる悪性腫瘍(癌)の1つにリンパ腫という病気があります。

リンパ腫は、白血球の1種であるリンパ球が腫瘍化することにより起こり、発生する部位により、消化器型リンパ腫、縦隔リンパ腫、鼻腔リンパ腫などに分類されます。そのうち、猫に一番多く発生するのは消化器型リンパ腫です。

この病気は中高齢の猫に発生することが多いですが、若い猫にもみられることもあり注意が必要です。

今回は、猫のリンパ腫について詳しく解説していきます。

 

 

目次
1.原因
2.症状
3.診断方法
4.治療方法
5.予防法や飼い主様が気を付けるべき点
6.まとめ

原因

猫の縦隔リンパ腫などは、猫白血病ウイルスなどの感染に関連することが明らかにされていますが、消化器型リンパ腫の原因はまだ明確にされていません。現時点では、遺伝的要素が関与していると考えられています。

 

症状

慢性的な嘔吐や下痢、食欲不振、体重減少を示すことが多く、お腹に腫瘤(しこり)を認めることもあります。また、便秘や食欲亢進を示すこともありますが、このような症状をまったく示さず、病気が進行してしまう場合もあります。

 

診断方法

血液検査や腹部のレントゲン検査、エコー検査を行います。これらの検査で確定診断することはできませんが、全身状態を把握し、他の病気と鑑別するために必要な検査です。

 

エコー検査などから消化器型リンパ腫が疑われる場合には、さらなる検査としてリンパ節や腸の一部を採取し、病理検査や免疫染色により確定診断する方法があります。

消化器型リンパ腫は、腫瘍細胞の形状により悪性度の低い小細胞性と悪性度の高い大細胞性に分かれ、それぞれ治療法が異なるため、確定診断を行うことは重要です。

しかし、内視鏡や開腹手術によりこのような検査を行う場合には、全身麻酔が必要になるため、高齢の猫では十分に検討する必要があります。

 

治療方法

小細胞性リンパ腫に対する抗がん剤治療には、ステロイドと抗がん剤(飲むタイプ)を家で投与する方法があります。この治療法では、およそ80~90%の猫が1年以上、寛解状態(疾患や症状が一時的に改善したり、消失したりする状態)を維持することが期待できます。

大細胞性リンパ腫に対しては、数種類の抗がん剤での治療を試みます。しかし、寛解は難しく、治療は動物病院で実施するため、半日~1日入院が必要です。

また、必要に応じて腫瘍を切除する手術、副作用の弱い抗がん剤による治療、緩和治療を選択することも可能です。

 

予防法や飼い主様が気を付けるべき点

現在のところ、消化器型リンパ腫を予防する方法は見つかっていません。

猫は、特に高齢になると寝ていることが多いため、体の不調に気付くことが難しくなります日頃から体をなで、痩せてきていないか、お腹にしこりはないか、などの変化を見逃さないようにしましょう

 

まとめ

猫に多い消化器型リンパ腫は、症状を示さずに進行していくこともあるため、特に高齢の猫では、定期的な健康診断を受け、愛猫が抱える不快感を少しでも緩和できるよう心がけましょう。

 

富山県射水市の動物病院 吉田動物病院
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