獣医師コラム

猫の大動脈血栓塞栓症について|突然の激しい痛みが起こる

猫の大動脈血栓塞栓症は、名前のとおり血栓が動脈を塞いでしまう病気です。
血栓が詰まると突然激しい痛みに襲われ、鳴き叫んだり暴れたりします。
そこで今回は、大動脈血栓症がどのような病気なのかについて解説していきます。

 

 

■目次
1.原因
2.症状
3.診断方法
4.治療方法
5.予防法
6.まとめ

 

原因

猫の場合、主な原因は心臓病です。特に肥大型心筋症の合併症としてみられることが多く、肥大型心筋症に罹患している猫の33〜50%に大動脈血栓塞栓症がみられるともいわれています。

 

肥大型心筋症についてはこちらから

 

また、肺の腫瘍が原因となったり、場合によっては原因不明(特発性)であったりすることもあります。

症状

全身のさまざまな血管に起こりますが、猫の場合は後ろ足に血液を送る「腹部大動脈」の分岐部に血栓が詰まりやすく、多くは両足に起こります

 

血栓が詰まると激しい痛みが生じ、突然叫び声をあげたり暴れまわったりします。さらに、

 

・呼吸が荒い
・足が動かない
・足が冷たい
・肉球の血の気がなくなる

 

などがみられることもあります。

 

また、死亡率が高いという特徴もあり、特に両足に起こった場合は予後が悪く、生存率は30〜40%程度だといわれています。

診断方法

問診や視診、触診などを行い、特徴的な症状を確認することである程度診断できます。

 

また、原因となる病気の有無や全身状態を確認するために、血液検査や尿検査、レントゲン検査、超音波検査、心電図検査などを行います。

治療方法

猫の大動脈血栓塞栓症では、まず鎮痛剤を使って痛みを和らげつつ、低分子ヘパリンなどの抗凝固剤を投与して、血栓が大きくならないように、そして新たに血栓が作られないようにします。
しかし、この治療を行っても、死亡率は60%にものぼるといわれています。

 

その他にも薬を投与して血栓を溶かす方法や、手術で血栓を取り除く方法などもありますが、リスクが大きいことからあまり実施されていません。

 

また、痛みが強く回復が厳しい場合には、涙ながらに安楽死を選択する飼い主様もいらっしゃいます。

予防法

原因となる病気にいち早く気がつきしっかりと管理することで、予防できる可能性があります

 

特に肥大型心筋症については、聴診や心臓の超音波検査を行うことで、無症状の段階で異常を発見できる可能性があります。
そのため、最低でも1年に1回は健康診断を受けるようにしましょう

 

また、治療が遅れれば遅れるほど予後が悪くなるため、激しい痛みを訴えていたり後ろ足の異変に気がついたりした場合は、ただちに治療を受けてください。

まとめ

猫の大動脈血栓症は痛みが強く、死亡率も高い病気です。
症状が現れる前に心臓の異常に気がつくことができれば、最悪の事態を回避できる可能性があるため、1年に1回は健康診断を受けるようにしましょう
また、治療が遅れると致死率も高くなってしまうため、万が一大動脈血栓塞栓症が疑われる場合は、すぐに当院までご連絡ください

 

富山県射水市の動物病院 吉田動物病院
TEL:0766-52-1517
診療案内はこちらから

 

<参考文献>
・https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2030851004.pdf
・https://www.jstage.jst.go.jp/article/jvma1951/34/11/34_11_545/_pdf

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